耳鳴りと難聴
更新日:2024.02.16
耳鳴りは本当に補聴器で治るのか?
耳鳴りにはさまざまな原因が考えられますが、補聴器をつけることで症状が改善する場合があります。この記事では、どのようなケースで補聴器による耳鳴りの改善が期待できるのかをご紹介します。
目次
どんな耳鳴りなら補聴器が必要?
耳鳴りは、周囲で何も音が出ていないはずなのに、聞こえるはずのない音が頭の中で聞こえる症状です。「キーン」という金属音のような高音のものから、「ボーッ」といった低音のものまで、さまざまな種類の耳鳴りが存在しています。
耳鳴りを引き起こす原因には、加齢、騒音、ストレス、薬によるもの、突発性難聴、メニエール病などが挙げられ、難聴と診断されるケースがあります。この場合、耳鳴りのほかにも耳閉感やめまいなどを伴うことがあります。ストレス、気圧の変化、ホルモンバランスの変化、高血圧、妊娠などが原因で耳鳴りが起きることもあるため、耳鳴りが続いたら、早めに耳鼻咽喉科を受診し、その原因をつきとめましょう。
耳鳴りの治療には音響療法、心理療法、薬物療法が行われることが多いですが、耳鳴りで悩む方の70%が難聴であるというデータもあります。その場合には、補聴器を装着することで耳鳴りの症状が改善する場合もあります。
耳鳴りが続いたら難聴の検査を受けよう
耳鳴りが続いたら、まずは耳鼻咽喉科で聴力検査を受けることが大切です。聴力検査の結果、難聴が分かったら、補聴器の装着を勧められることがある可能性もあるでしょう。各検査の概要は以下の通りです。
標準純音聴力検査
左右の耳それぞれに7種類の高さの音を聞かせる。どの音が最も小さく聞こえる音かを調べ、難聴の程度を軽度から重度の4段階で審査するもの。
語音聴力検査
会話で使われる語音の大きさを変えながら、どのくらい正しく聞こえるかを検査するもの。伝音難聴であれば、音が強ければほとんど聞こえるが、感音難聴の場合は聞こえないものも出てくる。
自記聴力検査
難聴が内耳の蝸牛で起きている(内耳性難聴)なのか、聴神経で起きているものなのかを判断する。音が聞こえている間はボタンを押し続けサインを送るもの。伝音難聴、感音難聴、心因性難聴の区別をすることができます。
SISI検査
一定間隔で流れてくる音が変化したらボタンを押すというもので、内耳性難聴かどうかを調べる。何回音に気付いたかにより、割合が算出される。
補聴器で難聴による耳鳴りが改善する?
耳鳴りは、音の伝わるルート(=「外耳→中耳→内耳→脳」)で障害が起きると、耳から伝わった音を脳が正しく認識することが難しくなり、不足した聞こえを補おうと脳が感度をあげようとすることで引き起こされます。脳の感度が上がると、通常は聞こえない音が脳に伝わり、これが耳鳴りとなって聞こえるのです。
耳鳴りは、どんな環境下でも起こり得るものです。日常生活に支障をきたさないためにも、耳鳴りを抑えることが望ましいですが、補聴器の中には耳鳴りを改善する効果を期待できるものもあります。
補聴器は一般的に、周囲の音を増幅してその人の聴力に合った聞こえを実現させるもので、耳鳴りの緩和を目的に作られた補聴器は、内部で響く音をマスキングすることにより、耳鳴りの軽減を目指します。ただ、耳鳴りを完全に消すことは不可能なので、その点には留意しましょう。
特に有効とされているのは、耳鳴り治療用の補聴器で、「サウンドジェネレーター(=音響治療器)」機能付きのものです。これは、静かな環境にいる時に、小さなノイズを発生する役割を果たすもので、耳鳴りの音を感知しにくくします。つまり、背景の雑音を増幅させることで、脳が聞きたい音に集中できるよう訓練してくれるのです。
サウンドジェネレータ付きの補聴器のなかには、ほかにも多様なフィルタリングを使った音楽や、周波数を振幅変調した音、異なったノイズ源などで聴覚を刺激し、短期間の耳鳴りを軽減してくれるものもあります。
補聴器以外で耳鳴りを緩和させる方法は?
サウンドジェネレーター付き補聴器を使う以外にも、耳鳴りを緩和させるものに、TRT療法、心理療法、薬物療法などがあります。
TRT療法
薬物治療による改善が難しい耳鳴りを緩和するために、提供されているもので、「TRT療法(Tinnitus Retraining Therapy の略で、アメリカで考案された耳鳴りの治療方法)」という耳鳴り治療があります。TRT療法は、「耳鳴り順応療法」、「耳鳴り再訓練療法」と呼ばれ、「サウンドジェネレーター」を使った音響療法と、カウンセリングを組み合わせて行なわれます。
医師によるカウンセリングは、耳鳴りが起こるメカニズムについて正しく理解し、不安や誤解を取り除くことを目的に行われます。そして、「不快な音」と認識されている耳鳴りを、訓練すれば意識しなくてもいい音になると順応させていきます。TRTの有効率は、日本でも80%という高い数字が出ています。
心理療法
カウンセリングによる耳鳴りへのアプローチ方法です。耳鳴りに悩んでいる人は、耳鳴りが続くことで余計に不安をつのらせ、そのストレスや不安感によってより耳鳴りを悪化させてしまうことがあります。カウンセリングでは、自分の感じている耳鳴りの症状を話し、耳鳴りに関する誤解などを解いて行くことで症状の改善を見守ります。
薬物療法
耳鳴りは、血流が悪化することが原因で起こることもあるため、内耳の治療で使われるビタミンB12や脳循環改善剤などが処方されることもあります。また、漢方を処方する病院もあります。
まとめ
耳鳴りには様々な原因がありますが、難聴が原因となる耳鳴りには、補聴器の装用で耳鳴りの悩みが軽減される場合があります。難聴が原因ではない場合の耳鳴りもありますので、詳しくは耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。